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福岡高等裁判所 昭和48年(ラ)60号 決定

抗告人 竹内春夫(仮名) 外二名

右法定代理人親権者母 野村千代(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消す。」との裁判を求めるというのであり、その理由の要旨は別紙記載のとおりである。

子が改氏をしようとする親と共同生活関係にあることは、改氏の許否を決するにあたり積極的な理由になるというべきところ逆に共同生活関係にない場合には、改氏によつてもたらされる利益等の特別な事情がなければならないと解するのが相当である。本件記録によれば、抗告人らは両親の離婚に伴い、父を親権者として父と同居中、昭和四七年一二月四日父の死亡によりその監護保育は祖父である竹内喜作、叔父である同喜良に委ねられていたが、昭和四八年二月六日親権者を母である野村千代に変更する旨の審判があり、次いで母から竹内喜作、同喜良に対して抗告人らの引渡を求める調停が申立てられたものの、抗告人らが母との同居を拒み、祖父らとの同居を望んだため、同年四月二七日不調に終つたことを認めることができる。このような事情のもとにおいては、抗告人らが母と同居するようになつた時は別として、現時点では今直ちに母の氏に改めることは相当でないというべきである。抗告人らが祖父らから虐待されていることは本件資料からこれを窺うことはできず、他に改氏について特別の事情があることを認むべき資料はない。

そうすると、抗告人らの氏の変更を求める本件申立を却下した原審判は相当で、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 池畑祐治 裁判官 生田謙二 富田郁郎)

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